Articles Library title

「じぶん時間を生きる」

「じぶん時間を生きる」

コロナ以降、エッセンシャルワーカーと称される業種以外では、リモートワークやオンライン会議も定着し仕事の自由度が一気に拡大しました。もはや若い人の価値観は終身雇用にはなく、地位や名声・必要以上の財を得たい、モノが欲しい、といったことから、精神的な豊かさや、身近な人との日常の幸せへとシフトしているようです。若い人にはこの本に書いてあることは、ごくあたりまえに感じるかも知れません。著者は、「成長を無批判に受け入れること」「生産性の向上を続けること」に違和感を覚えている人に読んでほしいとしています。

この本では、著者自身の人生の転機と移住の体験が、理論を用いて語られています。「そうだよな」と励まされ第1歩を踏み出す人、「そんなこと言っても、著者はたまたまうまくいっただけで理想論だ」と言って、本を横に投げ出してしまう人がいることでしょう。

私自身も、新型コロナのパンデミックという外的要因と、ストレスで生じた身体的な健康の異変という内的要因によって、転機を迎えました。後に振り返ってみると、本書で紹介されている、トランジション理論(Life is in the transitions-Mastering Change at Any Age, by Bruce Feiler: NewYork Times' best celler book) の段階:第1段階 終わらせる時期、第2段階 ニュートラルゾーン、第3段階 新たな始まり を経て今、第3段階にあると思います。手放すこと/ものには、収入・社会的な地位・過去に築いてきた他者評価・それに伴う生活スタイルなど、たくさんあります。そのため、第1段階、第2段階は本当に孤独でしんどい時期でした。

トランジションの期間中に向き合う感情の種類についてのアンケートの結果、その感情のトップは「恐れ」だ

これは、自分の存在意義を他者の価値観に置いているためなのでしょう。そのような恐れを経て、社会や他人の価値観に支配されるのではなく、自分を主語に自分がどう生きたいかということを考えるようになった時に、自分にとっての「豊かさ」を追及するライフシフトに踏み出せるのです。

年齢を重ねれば重ねるほど、私たちは手放せなくなっていきます。そうこうするうちに、現役と呼ばれる年齢はあっという間に過ぎていきます。70歳、80歳になっても、地位や名声を手放せず、後進を育て、経験の機会を譲るのではなく、自分が得ることに時間とエネルギーを注いでしまっているのは、すべての業界に共通してみられるようで、20-40代の若い世代からも、嘆きの声を聞くことが増えました。(もはや50代は諦めている・・)確かに地位を保持して第一線で仕事をし続けていると、ドーパミンが放出され続けて、楽しい快感を得られます。著者は、ドーパミンが放出され続けることで、セロトニンやエンドルフィン(心のバランスを整えたり多幸感をもたらす物質)が分泌されにくくなり、「今のままでいいのだ」という自己肯定感も生まれにくいこと、そうして無自覚のうちに、絶え間なくドーパミンを求めることとなり、ワーカホリックから抜け出せなくなり、心身の健康がむしばまれる、と言います。

「わかっていても簡単にはやめられない。その理由は「依存症」になっているからだ。僕らはゲームに負けて、勝ちのない存在になりたくない。「負け犬」という状態を回避するために、ひたすら働き、次第にワーカホリックになっていく」

「これまでと違い、社会全体が自分軸に移行した時代を迎え、当たり前だった資本主義ゲームの尺度から、積極的に脱却しようとする人たちがいる」と著者がいうように、確実に変わってきています。かつては全体主義が著しく、「他人と比較して生きる人生」」 「会社や組織のために自分を犠牲にするのが協調性があり大人の行動である」といった価値観が当たり前でしたが、Z世代と言われる人たちの主流となりつつあるようです。まだ全体主義からは抜け出せないものの、自分軸に移行して、資本主義ゲームの尺度からは脱却し、「自分の尺度で人生を生きようとしている」ように思います。保健師のリカレント教育をしながら、若い世代にはこれまでと根本的に異なる教育をしなければならないと感じています。(行政機関を選択する人は若い世代でも比較的まだ古い価値観に縛られているかも知れませんが)

「何かを終わらせることで新しい余白は生まれ、人生が変わっていく」

「古いエンジンへの未練を捨て、新しいエンジンをつくる」

「自分の尺度で人生を生きようとしている人」には励まされる言葉が散りばめられていると思います。本書の約半分は、移住体験談であり、移住によって目覚めたコミュニティへの視点などが書かれています。これまで企業人でコミュニティの重要性や自分にとっての大切さをあまり認識することなく、ひたすら働いてきたという、特に男性には、あるある話かもしれません。

ライフチェンジしたいな・・・トランジションを起こしたいな・・・という気持ちが少しでもある方、「じぶん時間」を大事にしたいなと思っている方に、一読をおすすめしたいと思います^^

20240907 jibunjikan book2