今日は、話題の書「運動しても痩せないのはなぜか」から。情報量がとても多いため、最初から最後までくまなく読破するのは、ちょっと大変かもしれません。飛ばし読みもありです。印象に残ったほんの一部をご紹介♪
植物は太陽光のエネルギーを変換して生きるエネルギーとして活用しているし、人間は生きるために、他の生物ー動物・植物を取り入れることで、エネルギーを得ています。人間が生きる上で必要なエネルギーは莫大なものになってしまいました。それは、狩猟で糧を生きていた時代に比べて、容易に食糧となるものを得られるようになったため、より多くのエネルギーを取り入れ、エネルギーとして活用することができるようになったためだといいます。
ヒトは他の動物に比べて、なぜ長生きなのか。ライフサイクルがなぜゆっくりになったのか。成長を減速して寿命を延ばすことができたのか?
ー霊長類は他の有胎盤哺乳動物の半分のエネルギーで生きることができるようになった。代謝のエンジンは大きく速度を落とし、他の有胎盤哺乳動物の半分のスピードになった―
その鍵の1つはここにあるといいます。霊長類の中で人は、脳の大型化に伴い大量のエネルギーを必要とするようになりましたが、「1日のエネルギー消費量は類人猿もヒトも似たようなもの」だといいます。代謝の速度を上げることで、莫大なエネルギーを消費していると考えていたのが、そうではないというのです。
「ヒトは肝臓と消化管を小さくすることで節約したエネルギーで、脳の大型化に伴い必要となったエネルギーをまかなっている(脳に回すエネルギーを増やし、消化管に回すエネルギーを減らした)」 ー脳と消化管のトレードオフ(P34)
興味深い話は続き、ヒトは類人猿の2倍もの脂肪を蓄えており、これが飢えに備え、代謝率を高める過程で成し遂げられた進化だといいます。脂肪を悪者扱いしがちですが、病気になり食事をとることができなくなった時、脂肪を蓄えた人のほうが強いのは、こういった進化があったのですね。
第2章では「代謝とは何か」と題して、生化学の講義が続きます。ざっと挙げると・・・
代謝=エネルギー消費である、管でつながった私たちのからだに住み着いた微生物が、食べたものを利用できる形になるまで分解しエネルギーを供給してくれている、体をつくりエネルギーを供給する代謝の原料となるのは「炭水化物・脂質・タンパク質」の3つであるークレプス回路・分解と生成のサイクルのついて、消化管に住む微生物叢(そう)の役割-食物繊維を分解しヒトのエネルギー源となる短鎖脂肪酸を生成する・免疫システムを助ける・消化管を適切な状態に保つ(他)、グリコーゲンとして筋肉や肝臓に貯蔵された糖類ー貯蔵量には限界があり残りは脂肪に代わるがこれをエネルギーとして利用するには手間がかかる
といった具合に💦
人体がいかに機能的にできているかは驚くばかりですが、驚く前に読むのをあきらめてしまう人もいるかも知れません。
第3章からは、各臓器の代謝(カロリー消費量)についてのくだりを Pick Up してみましょう。(P101-105)
心臓は約8kcal/時(192kcal/日)、肺は約80kcal/日、腎臓は140kcal/日、肝臓は300kcal/日、消化管は消化時を除けば、12kcal/時だが消化時は250~300kcal/時ともいわれる(そのうち微生物叢がどの程度消費しているかは研究中)。脳は約300kcal/日。3~7歳児の脳は基礎代謝(BMR)の60%以上(成人の3倍)を占め、多くのエネルギーを脳で使っている
臓器は知らぬ間に頑張って仕事してくれています。臓器がきちんと働いてくれないと、エネルギーは使われません。基礎代謝が落ちて体重が増える、という言葉の中には、こうした臓器の働きが低下することで使われるエネルギーが減るということも含まれます。ですから、臓器がちゃんと働いてくれるように、私たちはメンテナンスをしてあげること、大事に使ってあげること(酷使しないこと)も大事ですね。普段内臓ちゃんに意識を向けてあげることは、なかなかないかと思いますが、若い人でも同じです^^
ところで、愛犬家の私としては、なぜ犬の寿命がこんなにも短いのかと、愛犬を看取るたびに恨めしく思ってきました。成長が早いので、「もっとゆっくり成長して!」と思います。死の生物学についても、少し紹介されています。
「エネルギーをゆっくり燃やす種ほど長生きをする。-小さな種の細胞はエネルギーを速く燃やすので、代謝率と関連づければ、寿命がなぜ短いかを説明できる」
とする説がこれまでも提示されてきたものの、まだ強い関連を認めることはできていないようです。(P114-119)
この先まだ続くので割愛して、第6章以降ざっくりポイントを紹介しましょう。
糖類の摂取と肥満や糖尿病の関連について:糖類の消費量と過体重、肥満、糖尿病などの代謝性疾患、それによる死亡者数に関連性はない(!)「体重増加の原因を1つの栄養素だけに求めるのは無理な話(略)糖類からのカロリーが体重や代謝の健康にとって脂肪からのカロリーより悪い、あるいはよいことを示す証拠はほとんど見当たらない」(P241-245)-そんなことを言うと、炭水化物を喜んで食べちゃいそうですよ。(※全く関連しないということではないです) 「体重過多の人は、カロリーを制限すると、その方法に関係なく減量し、心血管代謝疾患のリスクを下げることができるだろう」(P249)
満腹感の得られる食品を選ぶことがカロリー摂取量を減らすコツ:2時間後に満腹感が十分になるのは「果実、魚、ステーキ、ジャガイモのような手を加えていない食品」満腹感が十分にならないのは「精白パン、箱入りシリアル、味付きヨーグルトなどの加工食品で、クッキー、ケーキ、クロワッサンなどのオーブンで焼いたおやつ類は特に満足度が低い 」 「ポイントは、タンパク質、食物繊維、エネルギー密度である。食物繊維とタンパク質を多く含み、一口当たりのカロリーが少ないものが最も腹持ちが良かった」(P256-257)ということで、少ないカロリーで満腹感を得られるものを食べることで、ダイエットできる!
運動をすればするほど痩せられるか?:答えはNO。「運動をしても1日の消費カロリーはそれほど変わらず、体重に永続的な影響がおよぶわけではない。」(!!)これには、「1日の消費カロリーを一定に保つための無数のトレードオフや適応」がその理由としてあるそうです。つまり、「身体活動(運動など)の消費カロリーが増えれば、他の仕事(臓器の活動など)に使うカロリーが減らされる」というのです。(※ただし、ヒトの場合は長期的観点から、維持管理・生存に必要なことにカロリーを配分しているので、必要不可欠な活動は守られている)
「強度6メッツ以上の激しい運動(ジョギング、サッカー、バスケ、バックパックを背負い歩く、自転車に乗るなど)は心拍数を挙げ、血流が速くなると、一酸化窒素が放出される。一酸化窒素は血管を広げて柔らかい状態に保つ働きがある。しなやかな血管は血圧を低めに保ち、詰まったり破れたりして心臓まひや脳卒中を引き起こす可能性も低い。中程度の運動(メッツ3~6、きびきびと歩く、楽に自転車に乗る、ガーデニングなど)も効果があり、血管内のブドウ糖が細胞に入るのを促す、気分転換やストレス解消につながり、うつ病の治療にも役立つ」 ということで、そうはいっても運動の効果はたくさんあります。(P263-274)
運動、運動、と言われるとなかなかできないのが運動かも知れませんが。ストレス反応を抑制する効果、生殖系のがん(乳がん、前立腺がんなど)のリスクを低下させる効果(=生殖ホルモンの抑制による)ことも紹介されています。また、体内時計と睡眠スケジュールがずれることで、1日のカロリー消費量を減らし、心血管代謝疾患のリスクを高める可能性についても触れられています。深夜勤務が入るような不規則勤務の人に、肥満のリスクが高く、心血管代謝疾患のリスクも高めることは、不規則勤務の方の健康診断の結果を見ているとよくわかります。。
運動の効果について最後にもう2点ご紹介。
運動をしても減量にはつながらないとしながらも、身体を動かさず座っていることが多いことで、からだの代謝調節能力が損なわれる可能性がある(運動によりホルモンや他の物質を全身に送っているが、それが途絶えるため)
身体活動(運動)は脳の空腹感と代謝の調節法に影響を及ぼすので、食欲をカロリーの必要量に合わせることができる(空腹・満腹を知らせる信号の調節がうまくいくので体重増加を防げる)
SDGsについての理解や取組みが広がっています。ヒトは工業化や開発によって、地球のエネルギーをーあたかも無限であるかのように、これまで好き放題に使ってきました。進化の過程で莫大なカロリーを消費するようになってしまいましたが、これだけのカロリーを永遠に使い続けると、地球のあらゆるエネルギーはじきに枯渇してしまいあす。化石燃料、太陽光、これらから得られるエネルギー=カロリーなのです。著者の言葉を借りると、「体内の代謝エンジンと世界を動かす対外のエンジン(原油、ガソリン、石炭・・・)の違いは言葉によるもの」。火で調理した肉には、火から得られたエネルギーが追加されている。その肉を食べている私たちは、火と肉のエネルギーを取り入れているということ・・・。
化石燃料の枯渇も遠くない将来やってくる。気候変動で植物や動物が育たない(生きられない)土地/Landが世界各地で広がって来ていて、飢餓状態にある人たちが既に増えています。
私たちはこれから後の時代、どうやって今と同じ量のカロリーを、何から得ることができるでしょうか。まるで映画の世界の話のようですが、考えていかなければなりません。飽食の時代からの転換を含め。


