コラム

奄美の伝統行事 ー豊年祭(2)

奄美の伝統行事 ー豊年祭(2)

前回は大和村大和浜集落の豊年祭を紹介しました。棒踊りやなぎなた踊りなど、今年はコロナ明けということもあり、久しぶりに盛りあがりを見せていました。(豊年祭(1)をご覧ください)

昼の部が終わると、一度帰宅し夜の部に備えます。浴衣に着替え、八月踊りの始まりです。

この八月踊りは、タイトルは同じでも地域によって曲調や踊り方が異なるため、その集落の踊りとしてその集落でのみ受け継がれていきます。

ご高齢の方々に話を聞くと、「昔は一晩中踊り明かした」とか、「浜で皆とずっと踊っていた」などの思い出が語られることもあります。

とりわけテレビが奄美大島にも普及し始める前は、島には娯楽もあまりなく、また、今のような島を1周する幹線道路がないために、簡単には隣の集落へも行けなかったーそんな時代。何時間も踊り、お互いの距離を縮めて親しくなっていったようです。

スマホでコミュニケーションをとるのではなく、踊りや会話、歌でコミュニケーションをとっていた・・そんな時代のほうがよかったのではないか。人間には声があり、話し言葉から始まり、文字が生まれていったのです。現代は、不自然なコミュニケーションが主流になってしまいました。今後、AI が普及していくと、こうした生の人間対人間の関係がますます希薄になり、人びとはコミュニケーションが苦手になっていきそうです。そんななか、この伝統的な八月踊り(棒踊りやなぎなた踊りも同様に)が継承されていくことは、とても大切なことだと感じます。

とはいえ、八月踊りも現在は時間を決めて踊っています。(結構長い時間で、私は以前20時から0時ころまで踊っているのに参加させていただきました・・・)

Amami 2023 yamatohama 7

八月踊りは、歌の歌い出しと太鼓がとても重要です。歌の構成が男女の掛け合いとなっているため、太鼓のどのタイミングで歌い出すか、何番を歌うのかを歌い出しの方が決めます。そのため、1番から順番に歌っていくというよりも1番から6番へ飛んでみたり、3番へ戻ってみたりすることもあります。

一つの曲で太鼓のリズムと踊り方は何番でも同じなので、一曲で何時間でも踊ることができます。

八月踊りの担い手が少なくなってきており、保存会が中心となって伝統を絶やさないようにと取り組んでいます。

12071285 956002137792941 1584738775 n

豊年祭は地域の伝統行事であると同時に、伝統芸能を受け継いでいく大切な場となっていると思います。

伝統行事として受け継がれてきている豊年祭が、今年から例年通りに執り行われるということが本当に嬉しく思います。いつまでも続いてほしいと願ってやみません。

豊年祭は、地域によってやり方が様々です。奄美本島内だけでも色々ですが、各島々によっても異なります。与論島は、特に独特です。この時期、いろいろな地域の豊年祭をたずねてみてはいかがでしょうか?!

2015 09 Amami

今回紹介した豊年祭の様子は大和村大和浜集落です。

10月にはクガツクンチもご紹介できればと思います。

写真協力  by H.Shigeno in N集落 Yamato Village