コラム

奄美の食文化 鶏飯

奄美の食文化 鶏飯

毎日猛烈な暑さが続きますね。そんな時に紹介したい奄美の郷土料理は「鶏飯」です。

 「みき」のほうが夏バテ防止にはよいのですが、やっぱり鶏飯!

平たく言えば、鶏飯というのは、

ご飯に具材をのせて「鶏肉の旨味をそのまま生かしたスープ」をかけて食べるシンプルな料理です。具材には、鶏はもちろんのこと、椎茸、錦糸卵、のり、ねぎ、タンカンの皮やパパイヤの漬物などが一般的です。

これが本当に美味しいのです。お店によってスープ(出汁)の味が異なるのも楽しいですよね。

さて、この鶏飯、約400年前の江戸時代、奄美諸島が薩摩藩の支配下にあった頃、薩摩の役人をもてなすために作られたのが始まりと言われます。島民の生活は貧しく、自宅で飼っていた鶏の首を絞めて、そこから出汁をとり、余った鶏肉を盛りつけ、薬味を加えて提供したといいます。当時、薩摩藩にサトウキビ・黒糖を搾取されていたといっても過言ではなく、薩摩藩の財政はサトウキビ・黒糖でうるおったにもかかわらず、年貢として献納した見返りーーー十分な食糧や財は藩から与えられなかったのですね。薩摩藩は「利益の分配」をしていなかった。昔、NHK大河ドラマ「西郷どん」でも、その様子が描かれていたかと思います。

Tさんは家庭の味はないそうですが、鶏飯をつくる習慣がある家庭ごとに、スープ(出汁)の味が異なるともいわれます。今日の写真は、奄美大島在住のTさんが先日撮影してきてくれましたが、奄美を訪島したら、私も必ず到着日と東京に戻る日に2食食べるほど大好きです。お茶漬けのような感覚ですが、それまでお茶漬けに興味がなかった私も、鶏飯がきっかけでお茶漬けをよく食べるようになりました。

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江戸時代当時、鶏一羽はとても貴重な食糧で、庶民はなかなか口にすることができなかったといいます。それえも、何とか薩摩藩の役人をもてなそうとしたのですね。

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どこのお店も、こんな風にたっぷりのスープを鍋に入れて、ごはんもおひつで提供してくれるので、これでお腹いっぱいになります(;'∀')本当にシンプルなんですけれど、、美味しくてやめられないのです。昔は庶民は食べることができなかったことを思いながら頂きます。

奄美大島の主なお店は3つあります。他にも居酒屋さんで食べられたり、島んちゅの方のご自宅で振舞われたり。今回写真の鶏飯は「ひさ倉」さんの鶏飯です。こちらはあっさり目のスープです。私は「みなとや」さんの鶏飯と、その日の胃袋の状態で選びます。みなとやさんが鶏飯発症のお店ですが、少し濃厚なスープです。奄美市街地にある「てっちゃん」に行くこともありますが、空港に到着してすぐ「ひさ倉」に立ち寄り、空港に行く前に「みなとや」に立ち寄るパターンができあがっています。奄美訪島時はぜひご賞味ください。

各家庭でも、引き継がれていきたい郷土料理の文化ですね。

最後に、「ひさ倉」さんに掲げてあった坂村眞民さんの詩で〆ましょう。

「二度とない人生だから、一輪の花にも無限の愛をそそいでゆこう」 

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調度、読んでいた本、「証し」(最相葉月著)のある個所と重なりました。

「人生は短いよ。日本人はこんなに忙しいのに、なんで喧嘩する時間が作れるの。時間がありませんよ。どうしてお互い赦せないことが作れるの。日本人は心がね、結構弱いですよ。(中略)なんでみんな、まわりに敵を作ってるの。必要でないよ。(中略)何度も言うけど、一番大事なことはね、隣人を自分のように愛すること。すべての私たちの人生の中で一番大事なこと。大事なことなんですよ」(エミール・ロドリグ・エテメ ケベック外国宣教会司祭P441)