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人とつながる

人とつながる

スコットランドのGlen Coe(グレンコー)渓谷に行った時、その静けさと壮大さに圧倒されました。

かつてここでグレンコーの虐殺が起こり、多くの血が流れました。厳しい自然環境であり、ここに暮らす人影はありません。人が一人で生きることは困難な地ですが、人が最期に還る地というような感覚を得られました。

人は人とのつながりのなかで生きています。つながりには、ポジティブな側面もあれば、ネガティブな側面もあります。日本社会では、同じ文化(ここでは規範や価値観など)を共有する特定の集団内で同調圧力が働き、「同じであること」をよいとする傾向にあり、没個性化や排斥なども起こっています。そこでは、差別も時には容認され、人権が果たしてまもられない恐れがあります。一方で、人とのつながりが健康によい影響も及ぼすことが明らかにされています。人とのつながりを一種の「社会関係資本」(Social Capital/ソーシャル・キャピタル)ととらえ、各地域で社会福祉協議会などが中心となり、「地域づくり」の取組みが行われています。

例えば、高齢者を想定して「地域づくり」として行われている取組みはどんな効果があると言われているかというと、このようなことが言われています(下記スライド参照)。

2023 07 15 old people connectedness

健康は食事や運動、医療(医療体制や具体的な医療行為を含む)だけの影響を受けているのではありません。社会における他者との関係性や役割などの健康へのポジティブな効果に関するデータが蓄積されてきました。もちろん、社会との関わりや人とのつながりが、すべての人に同じだけ(多く)あるのがよいとは言い切れないので注意も必要です。先にお話ししたように、ネガティブな側面もあるからです。

日本では、公的サービスで日常生活を支えることの限界を見越して、このような「地域づくり」を地域住民同士の「互助」(ささえあい)でカバーしようと政策転換を図りました。この政策方針が、10年、20年後、どうなるのかはわかりません。団塊ジュニア世代(現在の50前後の世代)が65歳以上となったとき、年金支給開始年齢は引き上げられ、年金額も少なくなり、無償もしくは低額の有償ボランティア活動をする生活のゆとりがあるかどうかもわかりません。今の現役世代は、別の形で、今から地域の中でのつながりや互助の関係づくりを進めていく必要があると思っています。長野県や奄美大島にいると、そういった取り組みが行政以外の人たちの手で行われていると感じます。

健康について考えるとき、それに関連する要因を広い視野でとらえていきたいものですね。

そして、これこそが公衆衛生・公衆衛生看護であると思います^^