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日本の医療・介護について思うこと

日本の医療・介護について思うこと

訪問看護の今について、少し思ったことを書いてみたいと思います。
この現状は、「そこそこ医療資源のある都市部」では、おそらく珍しいことではないのではないかと思います。
訪問看護師さんたちは一生懸命で、疑問を抱くことがあっても指示書が出れば飛んでいき、これは介護職でもできるのではないかということであっても、ただただ誠実にサービスを提供している。訪問診療医は患者さん思いで、患者さんや家族の言葉を傾聴し、おそらく患者さんと家族の安心のために、現在ケアが必要でなくても、「病状変化やADL変化の早期発見」のために訪問看護指示書を出し続ける。患者さんと家族は、訪問看護師が来ることで安心を得る(ように思う)。小規模多機能施設や有料老人ホームで働く介護士さんたちは高齢者が好きで思いやりがあり(そのように見える)、排便の処置も、入浴介助も、笑顔でサービス提供をされている。まさに、「高齢者に優しい国日本」を感じられました。それでも、私には危機感が先立ち、「いい国だなあ」などとほのぼのしていられませんでした。                                  
この国の医療保険制度・介護保険制度がこれでは破綻する もしくは 次世代の負担が底なしに増え続ける はたまた この状態の高齢者すべてにサービスを入れる介護・看護人材が足りず破綻する(すでに現場では訪問看護も介護も人材が圧倒的に不足している)
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介護保険法第4条第1項 国民の努力と義務  国民は、自ら要介護状態となることを予防するため、加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合においても、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービス及び福祉サービスを利用することにより、その有する能力の維持向上に努めるものとする
高齢者への訪問看護は、医療もしくは介護保険サービスとして、30~60分単価約5000~10,000円程度が公費により行われている(利用者は1~3割負担)。その内容は、バイタル測定、健康管理(持病の悪化もしくは悪化の兆候がないかの観察)、入浴介助(時には自立度が比較的高い方を含む)、爪切り、褥瘡等の創処置、排便コントロール(浣腸や摘便)、軟膏の塗布、体操、機能訓練などにおよびます。その背後の、介護認定の適正化の課題や、介護保険法第4条の理念が抜け落ちていること(医療職と利用者側の両者に)、過剰なサービス提供が行われているのではないかということが思った以上に見え隠れして、ショックを受けました。
社会には3回の食事もきちんと与えられない子どもたちもいます。爪が伸びたといって、こまめに爪切りをしてもらえない子どももきっとたくさんいる・・。生活苦の現役世代が山のようにいる・・。その人たちが支払う公費で、この高齢者に優しい国ができている・・・
過剰な投薬、指示書の指示事項は「予防や早期発見」であり、予防や早期発見をできるようになるための働きかけは行われないまま、延々と同じ内容の指示書が出され続けている現状・・。実際には要介護度2くらいでは?と思う方々にも、持病の早期発見やADL低下・フレイルの早期発見のために、訪問看護師が毎週訪問し続けている現状・・。
訪問看護事業所の訪問看護師さんたちは、医師に依頼されたら経営上断れません。指示に対して異議申し立てもできるものではありません。医師(病院)は指示書を書くことで報酬が入ります。関係者がどこまで支援/サービスの目標設定や評価を共有し、それを意識しながらかかわることができているのか?サービス担当者会議で、何をどこまで話し合えているのか・・。
本人負担1~3割負担のため、コスト意識が発生しにくいようにできています。多くの人に、そのまま与えられるものを受け入れる傾向がみられるように思います。
この現状を実際に見て考えていた時に、たまたま手にとった本がこちら。「日本の医療の不都合な真実/森田洋之著(幻冬舎新書)」森田さんは、総合診療医(プライマリ・ケア医)の必要性などを本書で訴えられています。そのほか夕張の経験や医師としての体験など書かれている内容は、まさにそうですよねと思うことばかりでした。
過剰医療や介護サービスに対して、「自分で健康管理をします」「気になることが出たり悪化の兆候が見られたら、すぐに相談します」といえる人がどれほどいるのでしょうか・・。
患者・介護者/家族の希望に耳を傾けながら、(患者・介護者/家族の状態にもよりますが)健康管理やリスク管理ができることも目標にすえて、教育的なかかわりやサポートをしていくことも、医療職に求められると思うのですが、体制作りを含めてそれが不十分んなまま、いつまでも訪問看護師がかかわり続けている(やってあげている)ような気がするのです。
現在の国民一人あたりの医療費や介護給付費がが膨らんでいる背景には、そういった医療職側の問題もあるかもしれません。国民の認識、知識の不足に対して教育的にかかわることで、訪問看護の過剰供給がなくなり、病院や訪問看護ステーションの収益は下がる可能性もあります。そうした経営的背景からも、様々な問題の見直しが進まないのかもしれません。
また、後期高齢者の終末期に、どこまで医療を行うか。胃ろうや点滴を行うかどうか。事前に十分本人・家族が考えられるように、医療職や介護職が寄り添っていくことが何より大切だと思います。両者にその気持ちと体制がなければなりません・・。
訪問看護、医療だけでなく、介護の問題は多くの課題を包含しており、難しい課題ですが、私たち(医療職・国民)一人ひとりが知識を備えて、日ごろから考えていかなければ、制度が成り立たなくなるのではないかと思うのです・・。今日は長くなってしまいました。引き続き、一緒に日本の医療・介護について考えていければと思います。
※繰り返しになりますが、制度を全否定しているわけではありません。持続可能な制度、について一人ひとりが考えていくことの提案です。
参考資料)
令和4年度版高齢白書 https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/zenbun/04pdf_index.html  
令和3年度 介護給付費等実態統計の概況 ttps://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/kyufu/21/dl/11.pdf 
令和6年度同時報酬改定に向けた意見交換会資料(第3回)(中医協)https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001103292.pdf https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001103291.pdf
挿入風景写真は、釧路湿原国立公園温根内ビジターセンターさんの写真をお借りしました。
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